カヤック日記


2018年4月の出来事



花を咲かせた東京湾岸のスナビキソウ。













写真:花を咲かせた東京湾岸のスナビキソウ。

スナビキソウはその後も順調に生育し月の終わりころには花も咲かせました。
もう心配ないようです。
昨年10月から心配しながら経過を見ていましたが、やっと安心できた感じです。
しかし、細かく見るといくつかの群落は消滅しています。
そういう群落も隣の群から数百メートルか1qも離れていないような場所にあったものですから、近くの群でまた種子が実り、実が波で流出すればすぐ近い場所にまた新たな群落が形成されていくと思います。
地下茎でのつながりがないそういう距離の群落の形成経過には興味があって、高波で種子が浮かんだとしても大抵はまたすぐ近くの海岸に打ち上げられて新たな群を作っていくのだと考えています。
しかし、それはどのくらいの時間がかかるものなのか、どれくらいの頻度なのか?我々ヒトの一生の時間単位で見たら結構気長に見ていないと分からない事だと思います。

写真:漂着物の合間から発芽するスナビキソウ。時に波に洗われても、漂着した有機物の養分を利用して生活しています。













写真:漂着物の合間から発芽するスナビキソウ。時に波に洗われても、漂着した有機物の養分を利用して生活しています。

ヒトはせわしない生き物ですから、植物から見たら「大変だな〜」とか思われていそうです。
春になると植物の葉や種子の成長の速さには驚かされます。
動物が移動に消費している分の養分を成長に充てているのだと考えると、植物の伸び育つ様子はある意味で分布拡大の移動でもあるのだろうと思います。
さらに種子は動物や空気や水の移動に便乗して負荷無くお任せ移動で済ますというなかなか賢いものです。
そして動物の方はその植物を摂取して生きているので、お互いさまというわけなのですね。

写真:巣の様子。オスが見張り中。













写真:巣の様子。オスが見張り中。

いつものハヤブサの繁殖も確認できました。
13日に交尾が観察でき、そして同時に巣も確認できました。
今回もカヤックで行かなければ観察できない場所であったため、風の強い日が多かったのでカヤックでの観察に向いた日が少なく少々苦労しました。
その後数回通って確かに繁殖が確認できたので、邪魔をしないようにしばらくは観察頻度を下げます。
ヒナの声が聴ける頃にまた見にいけば良いでしょう。
今年も無事に巣立ちが確認できることを期待しています。

そういえば、16日には巣のそばを昨年生まれのハヤブサの若鳥が通過し、番のオスに遠く見えなくなるまで追いかけられているところを見ました。
たまたま通過しただけなのだと思いますが、番のメスが昨年産み育てた個体だったりしないのかな?と思ったりしました。
確認のしようもないのですが。

写真:巣のそばを通りかかったハヤブサの若鳥。このあとに猛烈に追い立てられます。













写真:巣のそばを通りかかったハヤブサの若鳥。このあとに猛烈に追い立てられます。

15日には館山湾奥でキョウジョシギに逢いました。
この季節に南房総で見ることは少ないと思いますが、私が運が悪いだけかもしれません。
夏の終わりに近い頃にウミガメの産卵地である太平洋岸でいつも出逢うというのが主な遭遇です。
その時には鮮やかな羽色になっていますが、今回の個体は冬の羽から生え変わる途中でした。
夏に見かける時とは違い単体で、渡りの途中の休息なのでしょう。
ゆっくり休んで、無事に繁殖地に辿り着いてほしいものです。

写真:海岸で欠伸をしたり、のんびりした感じだったキョウジョシギ。













写真:海岸で欠伸をしたり、のんびりした感じだったキョウジョシギ。

その他にもチュウシャクシギの小さな群れもやって来て水辺は賑やかになってきました。
一方で冬の間を房総で過ごしていたカモメの仲間たちはほぼ立ち去りました。
残っているのは夏ものんびり過ごすと決めたかのような一部のウミネコだけです。
砂浜ではシロチドリの繁殖も始まっています。
今回は内房の某海岸で偶然ですが、初めて繁殖を確認しました。
そこは海岸駐車場のすぐ目の前で、このゴールデンウィークを無事に過ごしたとは思えないのですが、時間が取れたらゴールデンウィーク明けに行ってみます。
みなさんが海岸に到着した時に甲高い声で小さな鳥が低空で海岸を飛んでいたり、走り回ったりしていた時にはチドリの繁殖の可能性が高いです。
たぶん、すぐそばに巣があるでしょう。

写真:春は日中もとても潮が退き、潮干狩り、磯遊びには最適です。が、時間帯によってはカヤックを出す時に海が遠いです…。















写真:春は日中もとても潮が退き、潮干狩り、磯遊びには最適です。が、時間帯によってはカヤックを出す時に海が遠いです…。

その巣は、いわゆる「巣」のイメージを覆す、ほとんど何もしていない砂地にまとめて3つほどの小さな卵が産んであるというものです。
さらに親鳥は天敵が近づいた時には敵の気を引くために巣から離れますので、巣を見つけるのは難かしく、避けて通ろうにも避けられないという感じになってしまいます。
たぶん、本当はこの季節には海岸は出入り禁止にしたら良いのだと思いますが、そうもいきません。
少なくとも犬を放すのはやめてください。
海辺の野良猫も危険要因になっていそうな気がします。
直接捕食されるわけでなかったとしてもかく乱要因が多すぎれば、繁殖地として適さなくなってしまうでしょう。

そうこう言っているうちにシロチドリの数は明らかに減ってきているように感じます。
もしくは、シロチドリよりも人の環境に順応しやすい、砂地でなく砂利でも繁殖できるコチドリに置き換わってきてしまっているように感じます。
今後数十年で房総のシロチドリがすっかりいなくなってしまった、というようなことにならなければ良いのですが。
シロチドリについての紹介→海鳥のページ(シロチドリを選んでご覧ください)

写真:夕焼けに染まった崖の紅を反射した波。













写真:夕焼けに染まった崖の紅を反射した波。

スナビキソウのように、か弱そうに見えてもあの厳しい状況を乗り越えてくる能力があり、シロチドリのような小鳥でさえ海辺の厳しい環境で繁殖し、ヒナは産まれてすぐに歩き出します。
人が「自然を護ろう!」なんて訴えなくても、自然は本来非常に強いもので、そうそう絶えるようなものではないのですが、実は「護る」というようなことを言っているヒトが彼らの生活環境を最も害しているのですから、ややこしいです。
「護んなくてよいから、邪魔しないで放っておいてくださいね」と言っているような気がして仕方ありません…。
なのでせめてお邪魔する時にはできるだけ注意を払って、敬意をもって、相手の様子を良く見て、気持ちを察してあげられるとよいな、と思っています。

写真:台風で倒されながらも花を満開にしていたトベラ。













写真:台風で倒されながらも花を満開にしていたトベラ。






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