カヤック日記


2018年6月の出来事



南房総市白浜のウミガメ産卵地。















写真:南房総市白浜のウミガメ産卵地。

今年もウミガメの季節になりました。
梅雨から始まるウミガメ産卵調査は雨に濡れるのに慣れた頃に梅雨が明けて、今度は急速に暑さに対応しなくてはならなくなって、ある意味の鈍感さが必要な感じがします。
しかし今年は梅雨というほど雨も降らないうちに梅雨明けが宣言され、実際に急に暑さがやって来ました。
あまり雨に濡れなかったので、季節感がなく身体が季節に追いついていない感じがしていて、つまり毎年梅雨に雨に濡れるというのは季節を身体が理解して次の季節に対応するための準備になっていたのだと感じました。
それで今年は身体に夏を理解させるために、ウミガメ調査の際にできるだけ裸足で砂の上を歩いて、できるだけ足を海に浸けるようにしてみています。
それでやっと、ここのところ季節に身体が追いついてきたような気がしています。

6月末までのウミガメ産卵状況は以下のようにほんの少しです。(藤田発見確認のみ)
○南房総市白浜根本海岸 19日上陸、産卵痕なし 26日上陸、産卵痕あり
○南房総市白浜砂取 20日上陸、産卵痕なし
○南房総市千倉 21日発見、産卵痕あり
…と少ないですが、こういう年もあり、特に心配していません。

写真:根本海岸特有のMの字を書いて卵を産まずに海に戻ったウミガメの足跡。













写真:根本海岸特有のMの字を書いて卵を産まずに海に戻ったウミガメの足跡。

産卵地の海岸でよくお会いする、最近になって海女さんを引退されたおばあちゃんがよく昔の話を聞かせてくれるのですが、子供時分にはその海岸でたくさんのウミガメがやって来ていたそうです。
また、ある時にウミガメの卵を見つけたご兄弟がウミガメの卵を沢山持ち帰ってきて、当時子供だったおばあちゃんは、その卵のきれいなことに驚いて、またご兄弟はお父さんにとても怒られて、卵を巣に埋め戻して返してきた、ということを聞かせてくれました。
お父さまは卵をひっくり返したから死んでしまう、ということを知っていたそうで、そのおばあちゃんも子供を産む時のことを考えればおなかの中で赤ちゃんをひっくり返せば逆子になって困るということから連想して卵はひっくり返してはいけないと分かっていたそうです。
知識で得ていなくても、子供でもそういうことは感覚的に分かることなんだと気づかされました。
しかし、それは自然の中でいろいろな本当のものを見ながら育っているからかもしれないとも思いました。
ちなみに、そのお話は「ないしょだけどね」ということになっているので、皆さんも内緒でお願いいたしますね。

写真:自然の残る南房総の海岸線はキジの良い住処。













写真:自然の残る南房総の海岸線はキジの良い住処。

昔は自然が遊び場で、おもちゃだったわけで、それで自然のことを理解して、そういう世界のなかの一つとして自分があって、その生活の場である身近な自然を自分と同じように当然に大切にすることが理解できていたのだろうなと、そういうお話を聞かせてもらうとよく感じられます。
そしてその幼い時の自然体験をたくさん蓄えて海女となるのですから、例えば僕らシーカヤッカーやサーファー、ダイバーというような人間とは比べ物にならないような量の実感と経験に基づいた適応を基盤として海に出るのですから、僕らがいくら知識を溜め込んでも、できるだけの体験を繰り返しても到達できないような領域にいながら、いままで海女をしてきたのだろうなと、密かに尊敬しています。
そして、そういう人に共通と言えそうな謙虚さと優しさと笑顔は、ちいちゃなかわいいおばあちゃんだけど「とても大きいな!」と、いつもお手本にしたいと感じます。
ウミガメ調査の楽しみはこういうこともあり、実はウミガメが来ても来なくてもいいのかもしれないですね。

写真:高波で剥がされたオカヒジキ。















写真:高波で剥がされたオカヒジキ。

このおばあちゃんのようにウミガメ調査でお会いする方々との出会いと同じように、道中の発見はいつも楽しみです。
上の写真のオカヒジキは大シケの後に根っこごと剥がされていた若い株で、持ち帰って庭で育っています。
もちろんみんながたくさん持ち帰ってしまっては、海岸で見られるべき姿がなくなってしまうので、種子を少々持ち帰るか、今回のように死にかけていたものを見つけた時には頂戴するという感じにしたいです。
オカヒジキは本来、非常に強くて、その姿が見られなくなる時が来るかもしれないなんてことは海岸で昔から見ている人からすれば、まったくありえない心配事だと思います。
いわば海岸の雑草扱いだったようで、数年前まではウミガメ産卵地の、とある地域ではせっかく大きく育った株を根から抜いて海岸清掃の日に焚火で焼いてしまっていたりもしました。
海岸清掃って…という感じですが、それくらい当たり前のものなのでしょう。

写真:館山市の平砂浦海岸は東の半分近くがこのような状態で海浜植物はもう見られません。















写真:館山市の平砂浦海岸は東の半分近くがこのような状態で海浜植物はもう見られません。

でも海岸に人工的な造成されたものが、砂浜の山側の砂丘の手前の辺りの砂地を埋めてしまうとオカヒジキはあっという間に消えてしまいます。
例えば砂浜のすぐ上に海岸道路ができた場合もそうです。
オカヒジキは南房総では、ある場所では沢山ありますが、無いところでは全くないというような状況です。
これが南房総の海岸全体に及ばないように願っています。
スナビキソウ、ハマボッス、ハマヒルガオ、ハマゴウ、ツルナなども同じように今ではまだ普通に見られますが、海岸の開発状況次第で急速に減っていく可能性があると思います。
その時には我が家に育っているそれらの種子を浜辺に戻したとしても、生息環境自体が失われているので無駄になってしまいます。
ずっと先の未来が残念な方に進んだとしたら、それでもまだどちらかと言えば運の良い方を想像してみたとしたら、多分、千葉県の海浜植物は花壇のように囲われた海浜植物公園で見物するというものになってしまっているかもしれません。
そういった時代には、もうあのおばあちゃんのような自然に日常的に親しんで生きてきた人はもう見つからないんでしょうね。
もし、その時代まで我々シーカヤッカーやサーファー、ビーチコーマーのような海の自然で遊ぶ人が運良く残っていたとしたら、少しでもそういう感覚に近いものを残していける役割をできないものかと思います。 もちろん、あのおばあちゃんたちのようなものは持っていないですから出来る限りのことを…というレベルですが。

写真:スカシユリが咲いたらもう夏です!













写真:スカシユリが咲いたらもう夏です!

ウミガメの調査が始まってしまうと余裕がなくなって尻切れがちになってしまうハヤブサの繁殖の観察ですが、さらに今月は風が強い日が多かったこともあり、予定と海の条件が噛み合わず、特に今回の海からカヤックで観察するしかない巣の様子を見るのにはなかなか機会が得られませんでした。
それでも写真のように13日になんとかヒナの姿を確認することができ、ホッとしています。
写真の状況は親鳥(多分オス)がヒナにエサを与えているか何かで巣に戻っていたところに、もう1羽の親鳥が戻ってきて巣に入ろうとしているところです。
オスと思われる巣にいた親鳥は入れ代わりで、このすぐあとに巣から飛び立ちます。
写真でヒナは1羽のようにも見えるのですが、拡大してみると奥にもやや小柄なヒナがいるように見えなくもありませんでした。
距離はかなり離れていて、カヤックの上で揺れていることもあり、さらにかなりのトリミングをしていますから画像は状況が分かれば良いという程度のものです。
ハヤブサの反応や状況を見てできるだけ距離を置いて、長居はしないで最低限の記録が残せればよいという感じで観察しています。

写真:親子がそろった瞬間のハヤブサの巣。













写真:親子がそろった瞬間のハヤブサの巣。

その後はシケの日に陸から幾度か様子を見に行きましたが、かなり離れた場所からの観察で、巣は角度的に見ることができず、巣周辺の様子を見られるだけなので、ほとんど何も情報は得られませんが、26日に巣の近くにまだハヤブサがいるということだけは確認しています。
巣立ちをした若鳥が飛んでいるところを是非見たいので、7月に入ってからもチャンスがあれば出かけたいと思います。
過去にも南房総でのハヤブサの繁殖についてはこのカヤック日記で紹介していますので、是非ご覧ください。
検索で見つけられないので申し訳ないですが、過去の同じような季節のログを見ていただけると何例か出てきます。
2009年4月 2009年5月 2010年4月 2010年5月 2013年5月 2014年2月 など。

写真:梅雨の晴れ間。まだまだ静かな平砂浦の海岸。













写真:梅雨の晴れ間。まだまだ静かな平砂浦の海岸。

7-8月は特に海辺に人がやって来る季節になりますが、生き物の方も海辺での活動が活発になっていますから、人間の方でそれを意識して、海の生き物の生活圏にお邪魔しているという感覚を忘れずに過ごしたいですね。
夏の海の遊び方のひとつとして、特に海辺の生き物の生活を垣間見るにはシーカヤックは最適な方法です。
初めての方でも基本講習ですぐに海に出ることができ、その日から海上での自然観察を体験できます。
シーカヤックは音が静かで、その速度も海の生き物からすれば、とてもゆっくりで海の生き物にあまり脅威を与えないという点も良いところです。
生き物たちから危険視されないようにする、自然の中に入り込むにあたっての環境負荷を下げるという意味もあってシックスドーサルズのツアーは少人数で行っています。
シーカヤックで静かにのんびりと海の自然を是非体験してみてください。

写真:カヤックの上から見る世界。















写真:カヤックの上から見る世界。






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