カヤック日記


2017年6月の出来事



平砂浦海岸でのウミガメ調査中。













写真:平砂浦海岸でのウミガメ調査中。

今年もウミガメの産卵調査が始まりました。
何年続けることになるのだろう?という疑問も最近では考えることもなく6月になれば、それを始めるという風になってしまいました。
このままいくとたとえカヤックツアーをできなくなる年齢になってもウミガメ調べのための浜歩きだけは続けているのではないだろうか?という気がしてきました。

今月は産卵上陸が少なく、南房総市白浜ではたった1か所で館山市の平砂浦でも不明瞭で不確かな産卵をした形跡がひとつあっただけでした。
東岸の千倉では1か所痕跡があり、和田浦でも地元の方が発見し柵で囲っていた上陸痕がありました。
まだ6月ですから気長にあとの2か月に期待しています。
ウミガメの死骸漂着も私の海岸での移動範囲が増すこともありますが、発見頻度が増えました。
この6月だけでアオウミガメが7個体、アカウミガメが3個体ありました。

くちばしに釣り糸が絡みついた瀕死のハシボソミズナギドリ。













写真:くちばしに釣り糸が絡みついた瀕死のハシボソミズナギドリ。

今月はいくらか目新しい遭遇もありました。
特に9日の館山市の平砂浦海岸でのウミガメ調査時にはいろいろなものに遭遇しました。
まず釣り糸に絡まって瀕死のハシボソミズナギドリが見つかりました。
糸は嘴に幾重にも巻き付き、その糸を辿ると首に巻き付き、更には翼の付け根に深く食い込んでいました。
さらに悪いことには、その糸の延長はそばにあった漂着海藻の塊にも巻き付いていました。
私が想像するにはおそらく海上で海藻に巻き付いていた釣り糸の延長が伸びていたところで泳いでいた時に嘴が絡み、暴れているうちに身体にも巻き付いたのではないかと感じました。
そしてその海藻の塊に引き摺られるようにして身動きも取れずに打ち上げられたのではないかと想像しました。
ハシボソミズナギドリは水面で観察するとよく頭部を水に潜らせて採餌するかのような行動を見せます。
しかし餌を食べている様子はなく、水を飲んでいるのだろうか?と感じる時もあります。
そういう時に糸がくちばしに絡んでも不思議はないです。

漂着物にうずくまる様にして天敵をやり過ごすシロチドリの雛。親鳥は離れて「動くな!」と声をかけ続けます。













写真:漂着物にうずくまる様にして天敵をやり過ごすシロチドリの雛。親鳥は離れて「動くな!」と声をかけ続けます。

釣り糸が海藻に絡んでいるのは良くあることで、その海藻がまだ海底に生えていた時に釣り糸が絡み、釣人により切り離されたものでしょう。
同じ理由で危険な釣り針やルアーが絡んだまま漂着している海藻はいくらでも見つかります。
このハシボソミズナギドリは釣り糸を解いたあとに水を与えたところ活発に反応したので、浅瀬に連れていき手を添えて浮かべるような状態にして水に接したところ間もなく死んでしましました。
急に冷やしてしまったのが良くなかったのか?と思いましたが、いずれにしても回復の見込みのない状態でした。
繁殖期以外には陸に上がらないこの鳥にとって陸は安心できる場所ではなかっただろうと思います。

この種はこの季節に数え切れないほどの数が死んで打ちあがります。
南極に近い南半球の海でオキアミを食べながら繁殖し、北半球のオキアミが増える時期を過ごすために北上する途上で淘汰され南房総の海辺にも打ちあがるということだそうです。
しかし今回の個体は通常の淘汰ではなく、明らかに人の関わる死でしたので意味が大きく違います。
釣り糸や漁網による捕獲対象生物以外の事故死は目立たず、その発生頻度も確認しにくいですが、今回のハシボソミズナギドリのように密かに膨大な数の生物を無駄に殺しているでしょう。

マリンマーカー。黄色いGPSは長さ10p。




















写真:マリンマーカー。黄色いGPSは長さ10p。

そのあと、少し行くと海岸に金属の円筒形のものが見つかりました。
似たものを以前見つけたことがあるので、それが軍などが海上で目印となる煙や炎を出すためのマリンマーカーというものだと分かりました。
前回のものは自衛隊のもので、電話番号が書いてありましたので、すぐに連絡し回収してもらいましたが、今回のものは米軍だったため館山警察署に届け任せました。
試しに海上保安庁にも寄ってみましたが、地面の上は海辺でも警察の管轄だそうですので皆さんがもし見つけた場合には警察へ通報してみてください。
ちなみに危険物ですので、触ることなくマーカーの写真と位置のわかるような写真だけ撮って通報してください。

以前マリンマーカを見つけた時の日記 2008年12月 

館山市上空に現れた見事な環水平アーク。













写真:館山市上空に現れた見事な環水平アーク。

その次に遭遇したのは海とは直接関係ないものですが、珍しい環水平アークという一種の虹でした。
実はこの日は平砂浦に入る前からうっすらと環水平アークが出ていたので、それだけでも珍しいのですが、平砂浦海岸を立ち去ろうとしたところで急速にその虹色が濃くなり、今までに見たことがないような鮮やかな色になりました。
近年、このような様々な虹の現象を見ることが増えたように思いますが、今回のものは色の鮮やかさという点で忘れられないものになりました。
私の場合、単に外にいる時間が長いとか見晴らしの利く海岸線での滞在時間が長いからということはあると思いますが、フィールドに出ると何かしらが見つかる感じがします。

23日にはカヤックツアー中に内房某所でハマナタマメを見つけることができました。
これは私は初めてで、関東以西の分布であるこの種の東端の群だったりしないかなと期待しています。
その場所は海上からしかアクセスできない場所で、歩いて調べに来たりすることもできませんからカヤッカーであったことが役立ちました。
ツアー中でコンパクトデジタルカメラしか持っていませんでしたし、仕事中でしたからあまり記録の時間を取れませんでしたから、もう一度ちゃんとカメラを持って記録に行きたいと思っています。
今後定着するようであれば、ツアー中には皆さんにもご紹介できると思います。

はじめて見つけたハマナタマメ。















写真:はじめて見つけたハマナタマメ。

26日には館山市の海岸にあるグンバイヒルガオ群落ではその群落に埋もれるようにして種子が実るまでに育ったオニハマダイコンを見つけました。
昨年、やはりウミガメ調査中に千倉と丸山で同種を発見しましたが、南房総ではまだ少ないようです。
北米からの帰化植物で日本の北から中部までに見られるようになっているということでした。
一方、グンバイヒルガオは南方の種で房総半島は通常の分布域とされていない北限に近い場所ですので、このようにグンバイヒルガオとオニハマダイコンが一緒に生息しているケースは稀かもしれません。
帰化種であるオニハマダイコンは駆除すべきか悩みますが、もう少し様子を見たいと思っています。

同じく26日には平砂浦でクサガメに遭遇しました。
砂浜で母ウミガメでもなければ子ウミガメでもないようなサイズのカメの足跡を見ることは案外あるのですが、まさに歩いているところに出合うことはありませんでした。
近所の川に棲んでいる種を調べればある程度その足跡の主はわかるとは思いましたが、不明のまま放っていました。
今回はじっくり観察して撮影もでき、帰ってから図鑑で調べることができました。
ちょうど少し前に白浜の海女さんのひとりに「海岸にいた小さな亀をウミガメと間違えて海に帰しちゃったけど大丈夫かね?!」と聞いていたところでした。
私を亀のことは大抵知っている思って頂いている様子なのですが、ウミガメも知らないことがありますし、まして淡水のカメはまるで分らないので困りました。
実際のところどうなのでしょう?

写真:海岸を歩いていたクサガメ。













写真:海岸を歩いていたクサガメ。

ウミガメの上陸は少なかったですが、なかなか面白い6月となりました。
6月といえば梅雨でまだまだ寒いからと海から遠ざかっている方も多いと思いますが、混み合う前のしかし夏の生き物や植物が活発になり始める梅雨は海岸線の探索には意外と適していると思います。
7月ももう少し梅雨が続きますが、少々の雨は気にしないという方なら気温も日差しも適当なこの時期に一足早く海を楽しまれるのがお勧めですよ。





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