カヤック日記


2017年5月の出来事



餌生物を掴みながら飛んできたハヤブサ。













写真:餌生物を掴みながら飛んできたハヤブサ。

6月からのウミガメ調査開始を前に5月はスナビキソウ、それに寄って来るアサギマダラ、ハヤブサの繁殖が主な観察対象になります。
5月にもウミガメが産卵上陸にやって来る可能性はあるのですが、6月の上陸頻度や調査活動にかかる様々な負担を考えると6月からスタートするのが妥当と考えています。
負担を大きくしすぎて継続ができなくなってしまうのでは調査の意味が薄れてしまいますから、できることをできる範囲でやっていきたいと考えています。

いつものハヤブサたちの繁殖は未だに巣穴を確証をもって観察できずにいます。
昨年に続き、海上からしか観察できない崖の高い位置の窪みに巣を作っている様子で状況がよく分かりません。
ヒナの声も確認できていませんが、親鳥の活動は活発ですので、巣立った若鳥が確認できることを期待して6月もできるだけ通いたいと思っています。

スナビキソウ群落のある館山で最も自然状態の良い海岸へ上陸。















写真:スナビキソウ群落のある館山で最も自然状態の良い海岸へ上陸。

スナビキソウは地味な海浜植物ですが、最も海に近い場所で砂を維持していくれる役目を果たしている大切な植物です。
砂の中に丈夫で塩水にも負けない地下茎を伸ばし、波を浴びて葉が枯れても地下では茎が撤退することなく広がっていきます。
その地下茎がしっかりと砂を捕まえるのでスナビキソウが広がった場所の砂が波にさらわれることはほとんどありません。
そのような様子を見ているとスナビキソウが海に近づきすぎて留まろうとする位置をどうやって決めているのか不思議になります。
こういう植物が必要に迫られて更に海水に適応していけば海草になっていくのだろうな…と感じます。
スナビキソウは塩水には強いですが、もう少し山側に生えるハマゴウやハマヒルガオといった他の海浜植物の群落が広がってくると埋もれるようにして飲み込まれていき、そのうち姿を消していきます。
それでも大シケで高波が来てくれるとスナビキソウ以外の植生は枯れてしまいますから、また地下茎から芽を出して再生することも可能です。
他の植生の中に埋もれるよりは波を被ってでも他の植物が来ることができない海の近くで暮らすことを選んだという事ですが、もしもその先の海の中での暮らしに適応したとなると今度は海藻との競合がありますから、砂浜の最前線というのは意外と良いところなのかもしれません。

写真:スナビキソウに惹き寄せられてやって来るアサギマダラ♂。













写真:スナビキソウに惹き寄せられてやって来るアサギマダラ♂。

この場所でスナビキソウが競合しているのは実は我々ヒトです。
観光で賑わう海岸であれば踏みしめがまず大きな影響になります。
スナビキソウがあってもよさそうな海岸でも海水浴場になる場所ではまず見られませんから、ずっと昔に消えてしまったのではないかと考えています。
またコルク質の種子がその海岸に流れ着いたとしても現在の「観光海岸」での清掃の仕方では新たに植物が根付くことは難しいでしょう。
「ヒトの影響」と言っても多数の個体が数を増すことで海岸に影響を与える場合が初期だとすると、その延長にヒトの生活(経済?)活動である海岸環境の改変があります。
スナビキソウが育ちそうな場所が潰されて道路になっている場所はたくさんあります。
スナビキソウが競っているその他の海浜植生が安定させた海岸から砂丘に至る傾斜をコンクリートで固めてしまった場合には、最も海に近い場所に暮らすスナビキソウだけは生き残る場合があります。

写真:ある海岸の膨大な数に増えたハマボウフウ群落。ずっと昔には房総のどこの海岸もこのようだったのかもしれません。













写真:ある海岸の膨大な数に増えたハマボウフウ群落。ずっと昔には房総のどこの海岸もこのようだったのかもしれません。

だとすると、むしろ護岸が広がるにつれてスナビキソウには優位な環境が整いそうなものですが、そのような場所でも台風で高潮が寄せた場合には後背の植生群の中にあった地下茎の存在が重要な役割を果たすようです。
護岸がある場合、高潮に備えて山側にも地下茎を伸ばすということができなくなるために、そのスナビキソウ群落はかなり弱いものになってしまうようです。

スナビキソウと同じように海岸の砂を引き留めてくれている植物にハマボウフウがあります。
食用になることから房総では採取圧に耐えられず数を減らしていた海岸が多かったのですが、近年数を増してきています。
採取者の高齢化が関係しているように感じますが、海岸に接する人たちの努力も感じられます。
南房総の、週末になるとカヤッカーで賑わう、とある海岸では写真のように今まで南房総では見たことがなかったような数のハマボウフウが再生していました。

ハマボウフウは海岸に暮らす小さな昆虫たちの暮らしにはかなり重要なようで、隠れ家にも花の蜜を吸うにも、蜜を吸いにやって来た昆虫を捕食するにも良いようです。













写真:ハマボウフウは海岸に暮らす小さな昆虫たちの暮らしにはかなり重要なようで、隠れ家にも花の蜜を吸うにも、蜜を吸いにやって来た昆虫を捕食するにも良いようです。

他にも数が増している海岸がありますが、いずれも海岸への立ち入りに一定の規制をしているという共通点がありました。
自由に入れるけれど、入る場所を決めることで、人が踏まなくなる場所ができ、そこにハマボウフウが広がっています。
ハマボウフウは踏みしめにかなり弱いのかもしれません。
草なんて踏んづけてもへっちゃらでしょうという事はなく、特に砂浜は大型の生き物に踏まれる前提がなく進化してきているでしょうから、人のように踏みしめ圧の高い生物が急速に海岸へアクセスすることに順応することは難しいでしょう。
彼らを踏みしめる可能性のある最も大きな生き物は時々やって来るウミガメくらいだったのでしょう。
それも植生群の際での産卵ですから、僅かな影響でしかありません。

赤潮の広がった海。赤潮は様々なプランクトンの集まりです。















写真:赤潮の広がった海。赤潮は様々なプランクトンの集まりです。

今月は「見事な」と言いたくなるような赤潮が幾度か見られました。
神奈川県側でも発生して夜間には夜光虫として海岸を賑わしたようですが、私は夜間にカヤックを漕いで夜光虫を楽しむ機会を逃しました。
「昼間海が紅ければ夜光る」と知っておくと夜光虫狙いで漕ぐときに良い場所を見つけやすいですね。
カヤックツアーでもご要望いただければ夕方から夜間にかけてのツアーができますので、これからの暖かい季節に是非どうぞ!

写真:葉も花も美しいスカシユリが育ってきています。













写真:葉も花も美しいスカシユリが育ってきています。



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