カヤック日記


2016年7月の出来事



迷い、人間に助けられ、疲れたような背中で海に帰る母ウミガメ。




















写真:迷い、人間に助けられ、疲れたような背中で海に帰る母ウミガメ。

月が明けて間もない2日には久しぶりに母ウミガメに遭遇することが出来ました。
しかし、それは嬉しい遭遇ではなく、母ウミガメはもし放置されていれば死を免れなかっただろうという状況に陥っていました。
この日はカヤックツアーがあったため朝早めに上陸痕を探しに海岸に向かいました。
根本海岸では海岸清掃の際のゴミを埋める穴が掘られていましたので、その中に母ウミガメが入って出られなくなったりしていないだろうか?と気にしながら穴をチェックして歩いていました。
穴のほうは問題なく、そろそろ海岸の端に到達しようとしたところでウミガメの上陸した足跡が見つかりました。
「ゴミ穴の無いところで良かった…」と思いながら見渡すと海に帰った時の足跡が見当たりませんでした。

これはどこかでまだ歩いていると気付き、上陸の足跡を辿っていくと、産卵の痕がありました。
産卵は済んだのに帰り道で迷ったパターンだと分かり、海岸道路へ落ちている事を想像して焦りました。
以前にもここは海岸道路の間際でUターンしたケースがあります。
この道路への段差は50pほどはあり、落ちれば身体にダメージがありますし、海に帰る方法もありません。
更には以前沖縄で起きたような自動車にウミガメが轢かれてしまうという惨事の可能性もあります。※
しかし、不幸中の幸いで母ウミガメは海岸道路と砂浜の間に半人工的に出来ていた大きな窪みに迷い込んでいました。

潮溜まりを泳ぐ魚たち。




















写真:潮溜まりを泳ぐ魚たち。

カメの行動を確認し、もし自分で海に戻る事が出来る様子であれば見守るつもりでしたが、既にその窪みで何度も斜面を登ろうとした足跡が無数に残っていた為、脱出不可能な状態になっていると判断しました。
その状況は写真では判り難いため、動画で撮影し動画サイトにアップしてありますので、見てみてください。※
朝6時頃でしたが、近所のお店の方と近所の方に来て頂き、3人で何とかウミガメを斜面に沿って押すように越えさせることが出来ました。
ヒトに接近され、触れられた事でウミガメには大変なストレスがあったと思いますが、海に帰れずにいるよりは良かっただろうと考えています。
このような経験をしたウミガメが果たして同じ産卵地に戻って来るのでしょうか?
学習したとすれば、せめて隣の海岸に行くなどの対応をしそうなものです。
今回甲羅に付いたカメフジツボの写真が撮れましたので付着位置でおおまかな個体識別は出来そうです。
もしもまたいつかこの母ウミガメが根本海岸でこういう事になっていたとしたら、それを確認できるでしょう。
もちろん、それまでにその要因を無くしていきたいとは思います。

海岸で塩水を飲むモンキアゲハ。




















写真:海岸で塩水を飲むモンキアゲハ。

こんなこともありましたが根本海岸は今日8/1までに既に6ヶ所の上陸が確認できていて、その全てで産卵した様子がありました。
ひとつの巣に100個の卵としたとしても600の子ガメが産まれてくることになります。
また平砂浦、千倉-和田方面の上陸確認数も成績が良く今年は追跡調査はなかなか大変そうです。
嬉しい悲鳴です。

5日のカヤックツアー中には繁殖活動を確認していた例のハヤブサの巣のそばで親鳥と連れ立って飛ぶ幼鳥の姿を見ることが出来ました。
コンデジしか持っていなかったため、写真は掲載に耐えないものですので省きますが、立派に飛んでいた姿が忘れられません。
それ以降、姿を確認できていませんので、既に移動したのかもしれません。
元気でまたどこかで出逢えたら嬉しいことです。

今年も満開のグンバイヒルガオ。




















写真:今年も満開のグンバイヒルガオ。

6日には館山市にあるグンバイヒルガオ群落で今年も開花が確認できました。
19日には既に満開に達していて、今年も南国に訪れた気分が味わえました。
グンバイヒルガオは南西諸島などでは普通に見られる砂浜の植物で、南方のウミガメ産卵地の写真ではグンバイヒルガオ群落のそばで産卵している様子が見られます。
しかし南房総は北限と言われる伊豆諸島、紀伊半島より北でありながら群落があり、夏になると毎年のように漂着種子の発芽が確認できます。
今年も白浜と和田で発芽を発見しましたので、追跡記録中です。
しかし大抵そのような芽は台風の波や気温の低下で消失していきます。
そういう姿を幾度も見ていますので、館山市の大きな群落は奇跡のようなものだと実感できるのです。
これから先、多分私の寿命より長く、このグンバイヒルガオの群落は生き続けるでしょうから、その生息環境を十分に注意して見守りたいと思います。

激しく飛び回るヒナに激しく鳴きかける親鳥と思われるカワセミ。




















写真:激しく飛び回るヒナに激しく鳴きかける親鳥と思われるカワセミ。

27日には毎朝ウミガメ調査で通る岩礁でカワセミの親子を見る事ができました。
カワセミと言っても海辺で見られることは案外多く、特に河口周辺では普通と言っても良いくらい見られます。
ただ小さいし動きも早いので人目に留まり難いだけなのです。
今回の場所も時々カワセミを見る場所でしたが、2羽で一緒にいるのは珍しいと思いながら撮影したところ、どうやら1羽のくすんだ色の個体が幼鳥だと分かりました。
海岸沿いで繁殖したのでしょうか?
今年は飛来が遅かったキョウジョシギも数が少なめではありますが飛来し、餌生物の豊かな海岸は鳥たちで賑わっています。

自転車の轍とカニの足跡。自転車が砂浜を走る事の環境錯乱度合いはカニと同程度?




















写真:自転車の轍とカニの足跡。自転車が砂浜を走る事の環境錯乱度合いはカニと同程度?

夏休みに入って海水浴場が開きましたので、海岸はヒトの方も賑わっています。
かなり暑い日もありながら、曇りや晴れていても風が爽やかな日が多いのに助けられていますが、それでもやはり暑いですね。
カヤックをするなら時々水を浴びながら漕がないと危険です。
南房総の海岸は最近になって海水浴場指定から外された場所が多くなり、カヤックを海に出すのに困っていた以前に比べるとだいぶん選択肢が増えました。
しかしそれでもあまりに混んでいればカヤックを浮かべるのは迷惑になりますから、夏の間はかなり気を使います。
少人数の場合はカヤックを運ぶタイヤ(カヤックカートなどと呼ばれています)を使って海から少し離れた駐車場からカヤックを引っ張っていくと空いている海岸でカヤックを浮かべられたり、駐車スペースを探す手間が省けて便利です。
海岸までカヤックを押して海にアクセスするだけで、なんとなくいつもと違うのんびりした気分になるのは私だけでしょうか?
クルマの速度から、突然カヤックの速度になるよりも、間に徒歩の速度を挟むことでカヤックに乗った時の軽快さが感覚的に増すように感じるのです。
できれば艇庫からコロコロとカヤックを曳いてクルマに頼らずに海に出られればもっと良いですね。

コロコロと静かな海岸へ…。























写真:コロコロと静かな海岸へ…。



琉球新報「親ウミガメ交通事故死 大宜味・国道58号」2015年8月21日 11:55

Youtube「160702南房総市根本海岸で産卵後に半人工環境に迷い込み脱出不能となったアカウミガメ」

Youtube「160702根本海岸(母ウミガメが見たもの)」



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  「新属新種アワイルカ 千葉県鋸南町で化石発見!」

千葉県で発見されたイルカの化石が新種と判明し「アワイルカ」と命名されました。
「アワ」は「安房」で、属名にもAwadelphisと「安房」が含まれる千葉県のイルカです!
千葉県立博物館で頭骨化石が展示中です。

メモ

7/13 プラスティックに付着したカメフジツボを白子にて確認。
7/26 白子で確認していたオニハマダイコンで種子。



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