カヤック日記


2012年11月の出来事


凪の日、館山市の沖ノ島から出艇 冬になると海の事をすっかり忘れてしまう人も多いですが、季節ごとに海の様子は変化し、冬ならではの姿もあります。
シーカヤッカーや釣人、サーファーなどは海の季節変化の楽しみ方を知っていますし、海辺の写真を撮り続けている人もやはりそうでしょう。

そういう人たちは大抵着る物の選び方が上手です。
昔より衣類の保温効果が高くなったお陰で着膨れしなくても寒い思いをせずに冬のフィールドを楽しめるようになりました。 しかし衣類の快適さはちょっとした選択の違いで大きく変わってしまいます。
冬にカヤックや釣りをしている人はいかに快適に遊ぶかについては真剣なので、衣類選びにも真面目に取り組んでいますから平気な顔をして北風の中に遊んでいられるのです。
海辺の観光地で寒そうに腕を組んで肩をすぼめている観光客の人たちは大抵は街着のままのおしゃれをしています。
そういう格好で冬の海に来てみたら、それはもう懲りてしまうのでしょう。

スタンドアップパドルボーダーと夕焼けの海


せっかくダウンジャケットを着ていてもコットンの薄手の靴下や下着を着ていれば、長い間北風に晒されているのは辛い事です。 もしもっと多くの人がフィールドウェアーの選び方を正しく知っていれば、もっと冬の海辺を楽しむ人が増えるのではないかと思います。
もっとも根性でなんとかなっている人には不要のお話ですが…。

風の強い日が多かった11月ですが、風が止み空が晴れていれば汗ばむくらいの日もあり、そんな日には衣類も案外薄手で楽しめました。
海が凪いでいれば大好きなウミスズメを探しに漕ぎ出しましたが、残念ながらまだ見つける事ができませんでした。 彼らは繁殖の季節以外は上陸せずに海の上で過ごす為に風の強い日にはしばらく湾内で風を凌いでいます。 しばらく留まる事も多く、数十羽の群れを見るときもあります。

大抵は数羽が餌の小魚を追いながら、一方では餌を横取りしようとするユリカモメに付き纏われるという混成の群れの姿で見つかります。 遠目にも小さなウミスズメを見つけられるのはユリカモメがいてくれるお陰だったりします。
ですから冬本番になりつつある、この季節にユリカモメが渡って来てくれることは私にとってウミスズメ探知機が得られるのと同じ意味を持ちます。
白く目立つ上に騒々しく群れている事の多いユリカモメは1kmほど離れていても見える事もありますし、離れたところにいる仲間のユリカモメは私よりもっと遠くの群れの動向を探知しますので、何羽ものユリカモメが同じ方向へ飛んでいく姿さえ見つければ大抵はその先にユリカモメの群れが食事にありついています。

向かい風に煽られて波に虹が出る



ただしこのウミスズメ探知機は他にもウミウやスズキの群れなども見つけてくれるので、振り回される事も多々あります。
ユリカモメとウミスズメの合同食べ放題宴会が終わる前に辿り着こうと頑張って漕いで行っても、そこにはウミスズメの代わりにウミウが数羽ということもあり、実際にはかなり精度の低い探知機ではあります。

ユリカモメがウミウやウミスズメを追っているのは水中を泳いで魚を獲れる鳥がクチバシに魚を咥えて海面に上がったところで驚かして奪おうとしているのです。
しかし今まで見ていてそれで魚を得ていることはほとんど無いように見えます。
収支の合わないお仕事のようにも見えますが、それでもユリカモメのウミウやウミスズメへの執着はなかなかしつこいものです。


大騒ぎのユリカモメたち、カモメ類の中でも特に騒がしい ウミウが大きな群れになって魚を追っているような場合には水中にはイワシなどの大きな群れがいます。
そういう場合はスズキなどの肉食の大きめの魚も集まっていることもあり、小魚は逃げ場を失い、ますます集まって団子状になって身を守ろうとします。 最近では生物の生態を描いた映画などでもよく見られるようになったシーンです。

団子が水面に来た時には水中に潜る事ができないユリカモメもクチバシで魚を直接捕獲できるようで、それはかなり良い条件のようです。 カヤックからはたいていその団子は見えませんがユリカモメやウミウの行動を見ていればそれがある場所が想像できます。

コノシロ、サッパ?の若魚ユリカモメに追われてパニック状態








この29日には内房の岩井でかなり規模の大きなそういうシーンに出合いました。
プランクトンの密度が高い濁った水と透明度のある水の境辺りであちらこちらでスズキが跳ねていました。 少し離れたところではウミウが繰り返し潜り、上空はユリカモメだらけです。

そんな中でユリカモメがしつこく急降下しながら捕獲を繰り返していた場所に行ってみたところ小さな団子状の小魚の群れを見つけました。(写真)
多分もっと大きな群れだったものが幾度もユリカモメに襲われてこれだけのサイズになってしまったのでしょう。 周りには捕獲され傷ついて捕食された魚の鱗がキラキラと散らばっていて、群れの方はカメラを突っ込んでもすぐに立ち去れないほどにパニックになっていたようです。 かわいそうにただひたすらにクルクルと周り続けていました。

写真から種類を調べてみましたがコノシロの幼魚でしょうか?魚に今ひとつ詳しくないので自信がもてませんが…。
ユリカモメやウミウ、スズキにとっては貴重な御馳走だったのでしょう。 衣類選びと共にちゃんと食べる事も大切な体温維持方法ですからね。

カモメたちは海上で寝ます。日が落ちた後に寝床を選びながら群れで飛ぶ姿。

参考図書

東京湾の魚類 著:河野 博 編:加納光樹・横尾俊博 平凡社












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