カヤック日記


2012年6月の出来事


ガクアジサイ、大房岬 まずは嬉しいニュースです! またイルカが戻ってきました。
30日にイルカを見たというお話を頂き、その日粘ってなんとか確認できました。 今年初めに見られた群れと同じようです。
写真はイマイチなので来月に御期待下さい、頑張って撮ってきます! また長く居てくれたらいいですね…。

写真は梅雨といえばアジサイ。
海浜植物に括られるガクアジサイが今年も鮮やかでした。

ウミガメの産卵調査は順調です。 ちなみに今年も掘り返し確認はしません。 多分今後は産卵痕(ボディーピット)の状態で埋め戻し跡があれば「産卵」、埋め戻し後がなければ「上陸のみ」ということで記録していこうと思います。
出来るだけ触らないのがベターなはずですからこれでいいでしょう。
正確な調査と保護を天秤にかけると何の為の調査なのか分からなく事があります。 調査の為の調査ではなく保護の為の調査、もしくは保護の必要性を探る為の調査ですから、調査によって対象生物に少しでも害が及んでは意味がありません。

南房総市和田町の産卵地で自転車道に落ちたウミガメの足跡 今までは関わる人への情報伝達の際にやはり信憑性が重要でした。 しかしこれまでの調査でそこは十分になったのではないかと感じています。 これからはもっと距離を置いて、しかし親密に見守るという姿勢でいたいと思っています。

産卵記録ですが、まず1日に南房総市白浜町で掘りかけて諦めたと思われる穴がありました。
その後4日に同じく白浜町で産卵痕確認。 7日には台風3号が通過して行きましたが水没は免れました。

10日には白浜町で上陸のみで産卵痕なしで1ヶ所確認。
更に12日と19日白浜町のそれぞれ別の海岸で産卵痕ありの2ヶ所。 19日の巣は海岸清掃や海の家建設の際に重機が入る可能性がある場所でしたので市の環境保全課に連絡して避けるようにお願いしました。
20日夜に台風4号が去り、やっと海が凪ぎてきた22日には待ちかねたように白浜町の同じ海岸に2ヵ所上陸、内1つは産卵痕あり、もうひとつ上陸のみだった足跡は港内の砂浜でした。
24日にも白浜町で産卵痕ありが1ヶ所。

ハマトビムシを奪い合うウミベアカバハネカクシ、南房総市白浜町 同じく24日は千倉、丸山、和田方面の調査を行ない、他の人が既に簡易柵で巣を囲ってある上陸痕を含め4ヶ所確認しました。

うちひとつは海岸を突き進んだ挙句海岸沿いに設置されているサイクリングロードに落ちるというケースでした。(写真上)
写真では段の高さが分かりづらいですが、左海岸方面から右(山側)へ向かった足跡が道路に落ちてしまい道路に沿って海に戻ろうと行き来した形跡が見られます。 この段差は75cmもありました。
過去にも千倉の海岸で同じ事が起きていて対策が必要と思いました。 今回のケースでは居合わせた人が4人がかりで持ち上げて海に帰してあげたそうです。

25日には22日に港内砂浜で上陸しながらも産卵しなかった個体が戻って来たようで、全く同じ場所で上陸し妥協した様子で産卵痕がありました。
港の漁師さんに聞いたところ、ちょうど産卵痕のあるところは間もなく行なわれるお祭の際に「とさぎり」とよばれる焚火を例年行なう場所だそうで場所は簡単に変えられないとのこと…。

親と変わらない姿になった子供たちと過ごすシロチドリ 結局役所に打診して役所から区へ相談してもらう必要アリという事になって、次の日に現場で南房総市環境保全課職員とお祭役員の人などにより焚火の場所変更が決められました。
こういうことが少し不思議に感じるのは私だけでしょうか…。 まあとにかく巣は大切に護られる事となりましたから良いのですが。
また27日にも白浜町で上陸、産卵痕ありをひとつ…といった感じで上々です。

ただ気になるのはメインの根本海岸で上陸がないことです。 地元で生まれ育った知り合いの人も「おれがカメだったらここには上がんねえなぁ…」と。
自然のままであれば南房総で最大の産卵地になる可能性のある(過去はそうだったかもしれない)絶好の環境でありながら、キャンプ場はじめ問題が多々見られます。 カメにとっての好環境が人にとっても好環境であるために起きた悲劇です。 利用する季節が重なっている事も大きな問題です。 残念な事です。

県の東海岸が産卵地として適さなくなってきている今となっては南房総の産卵地はますます貴重な場所となってきています。

クジラの第一頚椎、平砂浦 千葉県や南房総市、地元区がそれに気付かなければアカウミガメ産卵地としての関東の将来は暗いでしょう。

ところで砂浜の健全さは虫たちでひと目で分かってしまいます。
毎年夏に清掃などの目的で砂浜を掘り返してしまったり漂着有機物をそっくり排除してしまう砂浜には虫がいません。
漂着有機物を何でも食べるハマトビムシやハマダンゴムシ、それらを食べる写真の甲虫(ハネカクシ、写真右上)などの生物連鎖が見られません。
気持ち悪い虫なんて居なくてちょうどいいじゃん、と思っていると漂着した海藻の山は必ず人が片付けなければならなくなります。
そしてこの虫を餌とする海鳥たちはこなくなります。
海水浴場にそんなもの必要ない!なんて言えるのでしょうか? 子供たちの興味は大人の目線とは違いますよね。

台風の去った後には蛇籠のような嫌な物も出てきますが、面白いものも打ち揚がるので海岸散策はやはり楽しみなものです。
今月はクジラの首の骨を久しぶりに拾いました。(写真右) あとは琥珀とかも拾えて楽しめました。

浮石、大房岬 ただ気がかりなのは浮石(軽石)の漂着が増えているようだという事です。(写真左)
鹿児島で見たような数ではないですが、以前は三宅島噴火の頃に多かったように記憶しているので少し不気味です。
浮石はどれもきれいで付着物もなく新しいものです。 黒潮下流の近場で何か起きているのでなければ良いのですけど…。

1924年の西表島近海の海底火山で噴出された浮石は黒潮に乗り11ヶ月で宗谷岬まで達したそうです。 そう考えると想像する以上に遠くからやって来たのかもしれません。
いずれにしても自然からの伝言のような気がしますね。





参考
海辺の石ころ図鑑  渡辺一夫 著 ポプラ社





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