カヤック日記


2011年6月の出来事


トビウオを掴んで飛ぶミサゴ 毎年行なっているウミガメ産卵の調査を今年も始めました。
海に行く事自体がまだ少し怖いと感じつつも半強制的に毎日出かけています。
実際のところ3月11日以降の余震では津波は発生していないのですから、もう少し安心しても良いような気もしますが全国的にみれば依然として震度5程度の地震が度々続いていますから警戒せずにはいられません。
千葉は東方、北東沖震源で小さな地震が続いていますが、小出しにしているからか大きなものは発生していません。 安心して良い事なのか、むしろ警戒するべきなのか…。

それでもとにかく海辺を歩いていると、その風景のいつもと変わらない様子に徐々に以前と変わらず海を楽しむ事ができている自分に気付きます。
写真のミサゴはおっきなトビウオを捕まえました。 繁殖中であれば大切な食糧でしょうね。
他にも海浜植物はきれいな花をたくさん咲かせてくれていますし、沖ではオオミズナギドリが飛びまわっています。


平砂浦のウミガメ上陸痕 ただウミガメがなかなか来なくて心配しました。 南房総市白浜町、根本から川下にかけての海岸に関して6-8月の毎日調査を始めた2004年以降2番目に遅い25日の初上陸でした。

過去の初上陸日(白浜町)
2004年6月11日 根本
2005年6月12日 砂取
2006年6月27日 根本
2007年6月 2日 根本
2008年6月 2日 根本 滝口
2009年6月11日 川下
2010年6月 1日 根本

2006年と今年は極端に遅いですね、どんな理由なんでしょうか?
しかし遅いのが今年だけでなくて良かったです。 また嫌な予感がしてしまいそうです。
とにかく今年もウミガメがやって来てくれたことは本当に嬉しいことです。

ただ産卵環境を見る限り、我々のウミガメたちへの歓迎は十分では無いようです。
写真の上陸跡は館山市の平砂浦海岸ですが、人工砂丘と河口との境を維持するために造られたと思われる堤防により産卵が妨げられています。 海からの距離を十分保てない場合にはウミガメは産卵を諦めて海へ帰ってしまいます。 写真の時もそうでした。
このような堤防が建てられる場合に保護対象種であるとされているアカウミガメが産卵に来る事を配慮していたとは思えません。 もし考えていたとしても平砂浦海岸は5kmくらいもあるのですから他で産んでください…と考えるのでしょう。

もっといい平砂浦があるはず…



そもそもこの砂丘は背後の松林と共に後背地の生活環境を飛砂と塩害から守るために造られたものです。
しかし実際には後背地にあるのはほとんどがゴルフ場、植物園を初めとしたリクリエーション施設であり、もともと観光目的の海岸道路(フラワーライン)です。 この砂丘維持における環境配慮の低さは、館山市が本当の自然環境や保護動物、保護植物の貴重さよりもフラワーラインやこれら観光施設が館山市にもたらす利益をどれくらい優先しているかを表現しているようです。

砂丘の維持にあたっては砂丘に棲息する海浜植物の状況や生物についても十分調査されているのでしょうか? 小さく珍しくも見えないけれど保護動物としてはランクの高いヤマトマダラバッタ(千葉県A=最重要保護生物)の棲息。 関東では珍しいグンバイヒルガオの群落もあります。


海岸林薬品散布を知らせる看板 分布が偏っているハマボウフウ(千葉県C=要保護生物)はところどころに他の食性に混じって棲息していますが砂丘を維持するための作業では重機によりあっという間に根こそぎ剥がされてしまいます。
人工的に造った砂丘であればそこに棲むようになった生き物の保護に必要性は無いという事にはなりません。
人工砂丘、人工松林、海岸道路がなければ本来は今よりももっと海からはなれた位置に広大な砂丘が形成されていたはずです。 そこはアカウミガメが産卵するにも適当な奥行き、緩やかで自然にできた砂丘に育つ海浜植物とそこに棲む昆虫たちと、一見沙漠のような世界に豊かな生態系が築かれていた事でしょう。
そこまで戻す事は無くても、せめて自然物を排除しながら行なう砂丘維持の環境負荷を抑える努力をするべきと思います。
きっともっといい平砂浦があるはずです。

また毎年6月に行なわれる松林の害虫駆除の薬剤散布は知らずに松林に入る観光客の生命に十分配慮できているのでしょうか?


擬傷行動中のコチドリ 平砂浦は観光施設が多い地域でありながら、その目と鼻の先に薬剤が撒かれている松林が広がっています。 植物園に来たついでに海まで松林を抜けて散歩する人、フラワーラインでランニングする人、自転車を漕ぐ人、その薬剤が染み流れた波打ち際でサーフィンをする人たち、皆知らないうちに少しずつ薬を取り込まされるのでしょうか。

先日、観光地である野島崎灯台に行った際には朝の放送で薬剤散布により松林へ入らないようにとの警告がされていたものの、日中になり増え始めた観光客には適切な案内は見られませんでした。 観光地で薬を撒く事、撒いたその日に既に入場を許している事に疑問を感じます。

写真のように一部に看板を立てるだけでは散布時に知らずに訪れた人への警告として不十分です。 散布から数日間には周辺施設の休止、林全体をテープなどで囲い、どこから侵入する場合でも警告に気付くようにするべきでしょう。
ともあれ、この季節に松林を通り抜けて海に出るのは出来るだけ避けてくださいね。

根本海岸 根本海岸は今年も準備の為の海岸整備に入りました。
この海岸では以前はシロチドリだけが繁殖していましたが、今年からコチドリが2組ほど繁殖している様子です。 館山市の太平洋岸の岩場が広がる伊戸、西川名地区の海岸線では毎年コチドリを見かけていますが、根本海岸のような広い砂浜で見るのは初めてです。

巣をつくるのはシロチドリと同じく地べたですが、シロチドリはひらけた砂丘の砂に半没させた卵の周りに貝殻の欠片を少し集める程度の巣を作りますが、コチドリは砂利で周辺に岩や植生等の遮へい物がある場所の方が安心な様です。 もしかするとキャンプ場中央に昨年以来出来た固い砂利のような小石の多い駐車スペースがコチドリの好みと合っていたのかもしれません。

この種は観察してみると、とにかく警戒心が強く、シロチドリも行なう擬傷行動を行ないますが、これがとても大袈裟で警戒の鳴き声も大きくシロチドリの存在感が薄れています。
写真は擬傷行動を行なっているコチドリです。 チラチラとこちらを見て気を引きヒナや巣から私を遠ざけようと一生懸命です。

フジナデシコ やっと海岸に通う習慣が戻ったばかりで海上に出るのもまだ気が引けます。一応8月にはツアー再開を目指していますが、私がこんななので…。
意気地がないと言われそうですが、3月以降の地震頻度を考えれば適当な判断とも考えています。 以前でも夜や朝に地震があった日には海に出るにあたってかなり神経質になっていました。 ましてやツアーでは。

今年の夏は少し臆病でも良いのかもしれないですね…。 「怖い」と感じるのは大切な本能ですからね。

でも8月分よりご予約を再開させて頂きます。 十分すぎるくらい用心して行なうつもりですので、もしよろしければ是非ご参加下さい。 よろしくお願い致します。








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