カヤック日記


2009年10月の出来事!




ソテツにとまったクロマダラソテツシジミ 右の写真は館山市塩見のカヤックベースのソテツに現れたクロマダラソテツシジミ。 今年初めて関東で観察され、南房総にも多数現れ話題になりました。(※1など) 他に海辺でも観察でき、思ったより数が多そうです。

幼虫がソテツの新芽を食べるのでソテツの多い南房総では特に心配されています。 定着し害虫として駆除対象になればまた農薬が撒かれる頻度が増えてしまうので、私はむしろそちらの方が心配です。 本来南方の種であるために温暖化との関係が考えられていますが、どうなのでしょう?

海上でも小さなチョウがたくさん見られました。 特に良く見られたのはシジミチョウとセセリチョウで暖かな日には海上1mほどを飛翔して行く姿を見かけます。
シジミチョウに関しては大抵は西から南の沖合いから飛んできて岸を目指しています。 その多くはウラナミシジミ(写真下)らしく以前からこの種は海渡りチョウの一種として有名です。(※2) しかし幼虫はマメ科植物を食べるので、これまた人にとっては害虫で、南房総でも多く栽培されているソラマメに現れます。


ウラナミシジミとオオカマキリ クロマダラソテツシジミもウラナミシジミに混じって海上を北上してきたのでしょうか? 内房で南西方向からシジミチョウが飛んで来る場合は伊豆半島、房総南端辺りで南から飛んで来る時は伊豆諸島からやって来るのでしょうか?

ウラナミシジミは岸に着いてからは満開のツワブキで蜜を吸っている姿が見られます。 この季節の海岸は花が少ないので彼らにとって貴重な食堂なのでしょう。
しかしツワブキ食堂は結構怖い場所で、満開の株では大抵一匹はオオカマキリが待ち構えています。 花の影に隠れて、ジッと待ちながら蜜を吸いに来るチョウを捕獲しています。怖いです…。

いつもなら10月に満開になるハマエンドウにもウラナミシジミは多数現れて吸蜜、産卵をしています。 しかし今月2回も台風が接近し、海岸に高波が打ち寄せたためにハマエンドウの開花がほとんど見られません。 特に8日に通過した18号台風では海浜植物は多くが枯れたり地下茎が露出しています。 それでも悪い事ばかりではなく高波のお陰で念願の黒潮の旅に出た種子も多かったと思います。


漂着したアカウミガメの死骸 海岸の様子も随分変わり、ウミガメの巣も全てが波に洗われてしまいました。 まだ確認していませんが、卵は流されてしまっている巣が多いようです。残念です。
また台風の波によって漂着したウミガメが3体見つかりました。 ウミガメの様に優れた遊泳能力を持つ生物が台風の波に揉まれて溺れるとは考えられませんから既に死んで漂流していたものが高い波によって漂着し易くなるのでしょう。

台風で地形が変わって地下茎がむき出しになったスナビキソウ、ハマゴウなども10月の終わり頃には新芽を芽吹いているものもありました。(写真下)
素晴らしい生命力ですが、考えてみればスナビキソウなど砂浜に適応している種にとっては凪続きで進出してきた本来上層に分布している植物が一掃され分布を拡大もしくは取り戻すチャンスなのかもしれませんね。






芽を吹き返すスナビキソウ ※1
房日新聞 9/30
「ソテツ害虫の被害広がる 安房生物愛好会 調査」

※2
「海を渡る蝶」日浦 勇 蒼樹書房
















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