カヤック日記


2006年5月の出来事!


カンムリウミスズメのヒナ

16日、館山市の太平洋沿岸でカンムリウミスズメのヒナを観察する事が出来ました。 私にとっては初めてのことで、それ以前に房総半島で繁殖の記録があるのかも分かりませんでした。通常、図鑑などでは離島で繁殖するとあります。 親鳥と寄り添うように泳いでいましたが岸から50〜100mのところのかなり狭い範囲で泳いでいました。ヒナはまだ潜水も飛行も出来ないようで親鳥と共にゆっくりと泳いでいました。 ヒナというと比較的身近なツバメの巣のように歩く事も出来ない小さなヒナが顔を出し盛んに餌をねだって鳴くイメージが姿があるかもしれません。 しかし海岸で繁殖する鳥はあまりしっかりとした巣を作らないものが多くヒナは孵化後、間もなく親鳥と一緒に歩くようになります。 岩礁で巣を作るカンムリウミスズメの場合では孵化後間もなく岩場を歩いて海を目指すそうです。

シロチドリの卵 砂浜後背地の植生や砂丘に巣を作るシロチドリも小さなヒナが必死に親鳥についていく姿を双眼鏡を使うと見ることが出来ます。 親鳥はヒナや巣に敵が接近すると敵の気を引く為に鳴きながら徐々にヒナから離れて行きますが、あまり敵の反応が無い場合には羽をバタバタやって弱った振りをしてまで敵をヒナや巣から離れさせようと努力します。 その間ヒナは物影に隠れてジッとしています。人間やカラスに対してこの行動をしているシロチドリがいれば、ほとんどの場合近くに巣があるかヒナが隠れていますので踏み潰さないように注意しなければなりません。 シロチドリの巣は毎年南房総市(旧白浜町)根本などで見ることが出来ます。根本では今年も2つの巣が見つかりました、右の写真はそのひとつです。親鳥が警戒するので囲いなどは設置していません。

この季節、カヤックで海上に出るとミズナギドリの類が良く見られます。 オオミズナギドリが多く、群れになって餌を捕っています。また南半球から北の海へ渡る途中のハイイロミズナギドリやハシボソミズナギドリも多く見られるようになります。(写真下) この2種は地球半周近い移動を一年に一往復するわけですが、長距離を渡る事もあり衰弱して海上を漂っていたりします。中には死んでしまうものも多く、6月になると毎年必ず海岸に多数の死骸が漂着しています。

鳥の渡りはとても興味深い自然現象ですが実際にその姿を見ると、これほどのリスクを負ってでも渡る価値があるのだろうか?と不思議になります。 渡り鳥というと一般的にはカモなど淡水の水辺にいる鳥のイメージが強い様ですが例えばカモメ類も毎年南北を一往復しています。 関東では冬の間、何種も見られるカモメ類が5月の終わりにはウミネコ一種のみになり、賑やかだった港は静かになってしまいます。 時々羽が痛んで飛べなくなったものが、いつまでも港にいたりしますが彼らはどんなに辛い事だろうと思います。 私も春に北に向かって去っていく海鳥達を見ていると何だか置き去りにされたような気分になるので不思議です。

ハイイロミズナギドリ 季節が変わるとまた別の生き物が入れ替わりで南房総にやって来ます。4日には洲崎のスナビキソウ群落近くで今年初のアサギマダラを確認しました。 アサギマダラは蝶でありながら渡り鳥のように海をも渡り季節移動をする事で有名な種です。 この時は目視と撮影しか出来ませんでしたが、その後に坂田などで移動を調べる為のマーキング調査も開始しました。 今年もアサギマダラとアサギマダラのオスが集まる希少植物のスナビキソウには注目していきたいと思っています。

海のものを調べるというと多くの場合、水の中のものや磯にいるものが主体になりますが、私はカヤッカーとして接する機会の多い砂浜周辺から沿岸にかけて暮らす生物に注目していきたいと思っています。 アサギマダラのマーキング調査やシロチドリの繁殖に興味をお持ちの方は是非こちらのツアーに参加してみてください。

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