カヤック日記


2005年4月の出来事!


シロチドリの巣

今年も房総の海岸ではシロチドリの繁殖が始まりました。写真は白浜町で確認した巣です。
この巣はハマヒルガオに囲まれ、私が今まで見た巣の中で最も美しい巣でした。卵の周囲には母鳥が嘴で集めた貝殻が敷いてあります。
今年もまた雛に会えるのが楽しみです、それまで親鳥は交替で卵を守り続けます。

遮るものの無い砂浜での繁殖はなかなか大変です。 例えば天敵のカラスは卵を目ざとく見つけて食べてしまいますし、観光地の砂浜では人や自動車により知らず知らずのうちに踏まれてしまうということもよくあります。
人やカラスが巣の周囲に近づいた場合、親鳥は怪我をして弱ったような仕草を見せて敵の気を引きつつ巣を離れて行こうとします。
もしどこかの海岸で小さな白っぽい鳥が自分の周囲をウロウロしていたらそのそばにはチドリなどの巣がある可能性がありますので是非注意してあげてください。

根本の街灯、右側が海 シロチドリが繁殖する根本海岸ですが、毎年アカウミガメも産卵に訪れます。
この海岸では2000年より調査をはじめ、産卵から孵化までの状況を確認してきました。
その調査により砂浜の背後にある道路に設置された街灯が原因で巣から脱出した子ガメが光に誘引され迷い、海に行くことなく多くが死んでいることが分かりました。 また母亀も産卵のための上陸の際に何かしらの影響を受けている可能性がありました。

その為、少しでも海亀の産卵に人為的な影響の少ない環境に戻したいと考えました。
興味を持っていただいた町民の御協力を頂き、まず一昨年からは砂浜から見える街灯を孵化シーズンに消灯をしていただきました。
そして今後継続的に効果のある方法として街灯の低圧ナトリウム灯への球換えをお願いしてきました。
詳しくは昨年8月の日記をご覧下さい。
2004/8の日記

その願いが今年叶い根本海岸の主に砂浜から見えてしまう10灯の球換えをしていただく事が出来ました!
写真は根本の現在の様子です。手前とずっと奥の白い明かりが通常の白色灯で赤いものが低圧ナトリウム灯です。
通常のものより値段の高い電球へ変える事に町がお金を出してくれるか当初希望が持てなかったので募金を考えていましたが白浜町が予算を組んでくれた事に感謝しています。
また私の希望を町に伝えてくださった方、募金の案について協力を申し出ていただきました方々に厚くお礼申し上げます。

今年この効果により、上陸する母亀、巣から海に向かう子亀にどのような変化が起こるのかしっかりと観察をしたいと考えています。
そして大きな効果が得られた場合には更に他の街灯による影響を受けている海亀の産卵する砂浜(白浜町砂取から川下にかけてと名倉など)にも街灯の球換えを期待したいと考えています。

今年も咲いたスナビキソウ 左の写真は春から海岸で見ることができるムラサキ科のスナビキソウです。
スナビキソウの房総半島における分布について実際に歩いて調べてみたところ、内房の木更津市から外房の和田町までの海岸でこの植物が見られるのは館山市と白浜町の一部の海岸に限られていました。
日本のあらゆる海岸で見られる種ではありますが自然海岸の減少が著しい地域では一部絶滅危惧種扱いになっています。※

このような植物がまだ見られる房総は運が良いと言えると思います。
それでも徐々に同じ道を辿っており、生息地である海岸そのものの環境を維持しなければ近い将来、南房総でもスナビキソウを見られなくなると考えられます。
事実、数少ない館山市の生息地のひとつは道路の建設で生息面積が減ってしまいました。
この植物はアサギマダラという渡りで有名な蝶を誘引する事でも最近注目を浴びるようになりました。
今年も花を咲かせたスナビキソウに間もなくアサギマダラが集まる事と思います。
ずっと将来にもまた同じ風景が見られることを期待したいですね。


お知らせ

OWS(The Oceanic Wildlife Society)
海のトークセッション第16回
「カヤッカーによる南房総、海辺の記録」
開催日時 2005年5月24日(火)19:30〜21:30
スライドを用いたトークセッションです。
是非ご参加下さい。
詳しくはお知らせのページをご覧下さい。


※参考:スナビキソウのレッドデータ評価

千葉県カテゴリー:C 要保護生物
個体数が少ない、生息・生育環境が限られている、生息・生育地の多くで環境改変の可能性がある、などの状況にある生物。 放置すれば著しい個体数の減少は避けられず、将来カテゴリーBに移行することが予測されるもの。 このカテゴリーに該当する種の個体数を減少させる影響及び要因は最小限にとどめる必要がある。
(千葉県自然保護課ホームページより)

他の地域
宮城:絶滅危惧U類、愛知:絶滅危惧IA類、和歌山:絶滅、鳥取:準絶滅危惧、香川:絶滅危惧T類、長崎:準絶滅危惧、熊本:絶滅危惧IA類 など
(各県ホームページより)



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